チラシの裏、あるいは付箋の端

適当に駄文をしたためたり。

音ゲーとそのeスポーツ的な立ち位置についての雑感【2024】

 

平素よりお世話になっております。

私の好きなとあるゲーマー兼Youtuberの方が、「しっかりとまとまった文章でないと書く意味がないと考えてしまい、結果として書くのが億劫になってしまうのは勿体無い」というような趣旨のことを言っていたので、それに倣って「最近ふと思ったけどTwitterで呟くには長くてまとまらないなあ」みたいなことを雑に書き記しておきたいと思います。

 

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音ゲーとそのeスポーツ的な立ち位置について

私は中学生くらいの時から十数年ほど音楽ゲーム音ゲー)を嗜むくらいにはやっていまして、環境の変化などもありここ数年はほとんど触れなくなってしまったのですが、今でもしばしばプレイ動画や大会の生放送を見たり、最新情報を見て騒いだり、好きなアーティストの新曲を聴いたりなどしています。現行機種だとbeatmania ⅡDX、pop'n music、GITADORA辺りを当時主にプレイしていました。

今ではコロナ禍の影響もあり音ゲーをプレイできるゲームセンターも徐々に数を減らしていて、自宅でプレイできる家庭用ソフトが次々と発売したり、スマホ版の音ゲーが大ヒットしたりと私が遊んでいた当時とは環境もかなり変わってきているなと感じます。

 

そんな中、最近界隈で話題になっているのがとある音ゲーのプロリーグ(大会)について。

何が話題になっているかというと、端的に言えば視聴者が「流石にこれはあんまり良くないんじゃないかな・・・」と思うような様々な問題が大会の中で起こっていて、その声が徐々に広がっているということです。

私は専らROM専として楽しんでいるだけなので、現役のプレイヤー目線になれるかというとかなり怪しめなのですが、仕事上eスポーツ(便宜上この言葉を使います)の運営サイドに携わっていたこともあり、どちらかというと運営側の目線でここはちょっとどうなんだと疑問に思うところがいくつかあります。他の視聴者の方々も挙げていますが、以下の点がそれです。

・試合のリアルタイム有料先行放送
・グッズ販売
・ゲーム性の大会としての難しさ

・試合のリアルタイム有料先行放送

例のプロリーグの試合はインターネットで放送され、オンラインで誰でも視聴することができます。が、少々特殊な形になっており、試合の模様を事前収録した上で編集された録画版が放送されています。いわゆる一般的なテレビ番組と同じ形ですね。

これが正直eスポーツの放送形態としてはかなり珍しい(というかほぼ見ない)形式で、主要なゲームタイトルの大会に関してはまず前例が無いと思われます。

理由としてはまずそもそも試合の公平性が保たれないこと。録画した映像では編集次第で何でもできてしまうので、ものすごく極端な話、試合でAチームが負けたら「今回はAチームが勝つことにしたいのでもう一度収録をやり直します」ということすら出来てしまいます。(あくまでものすごく極端な話です)
逆に編集が可能なことで、機材トラブルなど生放送ならではの事故を防ぐことができるというメリットも存在します。例のプロリーグがこの形式を取っている最大の理由がこれなんじゃないかと思います。

あとは選手と視聴者間で試合の盛り上がり・喜び・落胆etcをリアルタイムに共有できないこと。動画のコメント機能や試合後の振り返り配信なんかが代表的な例ですね。
これはどちらかというと選手側への悪い影響が大きいです。単純に放送が終わるまで試合を終えての感想を一切発信することができず、様々な感情を自分だけが抱えたまま沈黙していなくてはいけません。

このようにeスポーツの放送としては録画放送は基本的にはあまり向かないというのが個人的な考えなのですが、今回特に大きく話題になったのが、そんな録画放送に加えて、リアルタイム先行生放送を有料チケット販売方式で行うというところです。

これは一見、今までなかった生放送が見れるというメリットがありますが、有料生放送を見る視聴者と無料録画放送を見る視聴者に差が生まれてしまうというデメリットもあります。これによって副次的に生じるのが前者はネタバレに配慮しなければならず、後者はネタバレに怯えなければいけないという問題です。
eスポーツのみならず、スポーツの大会においてネタバレはかなりきついです。勝敗結果が分かっている試合を見るのは正直言って楽しさが7割くらい減ります。

「ネタバレが嫌なら有料チケットを買え」と言われればそれまでですが、これは元々無料で録画放送を見ていた視聴者も「じゃあネタバレ踏むのも嫌だし見るのやめるか」と離れる要因になりかねません。
つまり、これは運営側が顧客満足度の向上視聴者層の拡大よりも瞬間的な収益性の向上を優先する方向に舵を切ったと言えます。

また放送自体に値段が付くと、途端に他の同じような有料コンテンツとの比較対象になり、チケットを売るためにはかなり高いハードルを越えなければいけません。正直に言うとプレーオフや決勝戦ではないレギュラーシーズンの試合という程度のコンテンツでは値段相応のクオリティは担保されていないと感じます。それ以前にチケット販売で大きな収益を上げられるほど、そもそもの購買層の母数が足りていないでしょう。

つまり、現状のプロリーグは有料チケットで収益性を上げる以前の段階で、先にその土台となる視聴者層の拡大の方が必要に感じます。他のeスポーツと比べてもゲームタイトルも参加するプレイヤー(選手)も圧倒的に世間の知名度が低いからです。
一応音ゲーというジャンル全体で見るとそこそこユーザー数が多く認知度もあるゲームジャンルだとは思いますが、それだけで多くの視聴者を引っ張ってこられる力を持つゲームタイトルやプレイヤーは音ゲー界隈にはほぼ存在しないのが現実かと思います。(VALORANTにおけるLaz氏やストリートファイターにおけるウメハラ氏のような)
始まった時はそういったプレイヤーの育成やゲームタイトルの認知拡大施策の一つとしてのプロリーグという企画なのかと思っていたのですが・・・

・グッズ販売

過去の大会では、プロリーグの開催に合わせて様々なオフィシャルグッズの展開も行っていました。グッズ販売は大きな収益基盤になるため当然行われるべき施策だと思いますが、一部物議を醸すような商品があり・・・

それが「プロリーグ所属選手の実写を使用したアクリルスタンド(全32種ランダム)」1,500円(税込)。

ぜ、全32種ランダム!?

選手の実写アクリルスタンド自体はネタ的にも面白いし買うファンの方も結構いるとは思うのですが、まさかのガチャ仕様。
推しの選手が1人いたとして、その選手のアクスタを手に入れる確率は単純計算で3.125%。大体主要ソシャゲのSSRくらいの期待値です。しかも10連ガチャでSSR確定!なんて仕様は無く、1回引くのにリアルマネーで1,500円もかかります。

※後々現地で受け取れる場合は2リーグどちらかから選べるという仕様変更が入り、欲しいアクスタを手に入れられる確率が16分の1まで緩和されたようですが・・・

ファン層を馬鹿にしているのか、それとも石油王しかいないと思っているのかは分かりませんが、計画段階で誰か止める人はいなかったのでしょうか・・・

こういった商品は選手によって売れ行きに差が出てしまい、現地販売をすると選手人気の可視化にもなってしまうという側面がありますが、もしかするとそういったことを避けようとする意図があったのかもしれません。それでもちょっと普通じゃないとは思いますが。

ちなみにこの選手の実写アクスタはプロリーグに所属する各チーム側でもオリジナルの物を個別に販売しており、応援している人はどう考えてもそっちを買うと思うので果たしてオフィシャルグッズがいくら売れたのかは甚だ疑問です。

こういった部分から、イベントにおいてかなり重要な収益基盤であるグッズ販売もプロリーグという部分ではあまり上手くいってないのではないかと感じました。

・ゲーム性の大会としての難しさ

これは運営側がどうこうというよりはゲーム側の問題ではあるのですが、そもそもゲーム自体があまりeスポーツに向いてないという点です。

音ゲーは音楽に合わせてゲームをプレイしその出来によってスコアが出るというものですが、そもそも対戦を前提にゲームが作られていません。一部対戦モードがあったりもしますが基本的には自分との戦いが主です。

今回のプロリーグタイトルで言うと、ポップンのオジャマのように相手に干渉できる要素も特にありませんし、いざ対戦するとなると選曲くらいでしか駆け引きが存在せず、勝つためにはひたすら自分の腕を磨くしか基本的にはやることがありません。

そんな中でスコアを他人と競うという側面を全面に押し出した今回のプロリーグだと思うのですが、ゲームのUIが対戦をメインにしていないため見ている側からしても何が起こっているかがさっぱり分かりません。
約2分間という短い時間で譜面が高速で降り注いでいくので、今どちらが勝っているのか、何がすごいプレーなのか、プレーしているのはどんな曲なのか、大抵の人は何も追いつけないまま終わってしまいます。解説の方も置いていかれないよう早口で懸命な解説をしてくれていますが、音ゲーを十数年プレーしている私ですら2人分の画面を見るのはほぼ不可能に近いです。

他のゲームタイトルを見てみると、FPSゲームでは基本的には解説を聞きながらゆっくり見ている時間も多く、いざ撃ち合いになると刹那の駆け引きが生じるプレーなども存在しますが、ゲームが終わるとスローリプレイなどで前のプレーは何がすごかったのかを見せてくれますし、格闘ゲームは必殺技などが出るときは派手な演出が入っていて、いかにもここが盛り上がりポイントだぞというように見る側にも分かりやすくなっています。

このような部分は正直なところゲーム自体の向き不向きが大きいとは思うのですが、対戦用モードのUIの改善次第ではより見やすくなる余地も大いにあると思います。(昔のギタドラのバトルモードなんかは少し見やすかったですよね)

あとは楽しむために見る側の知識がかなり必要とされるという点もありますが、これは正直どのゲームでもそうなのである程度は仕方ありません。普通はVALORANTの全エージェントのスキルや特性なんて覚えていられないですし、スマブラの各技の有利フレームなんて知ったこっちゃありません。
そういった視聴者のために「なんかよく分かんないけどすごそう」と言う見せ方をするべきなのがeスポーツだと思います。

 

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・・・と、思ったことを特に引用や参考画像も無しに長文でベラベラ書いてしまいました。

個人的にはゲームの大会を見るのはとても好きで、最近はVALORANT、スマブラストリートファイタースプラトゥーン辺りの大会はほとんど見ています。だからこそ好きなゲームの大会には多くを求めてしまう部分もあり、ましてや大企業が主催してるんだからもうちょっとしっかりしてくれよと言いたいところがあります。(スマブラの大会なんてほとんど個人主催ですからね)

ただ先述したように今回話したゲームタイトルに関してはいかにユーザー/視聴者層を増やしていくかが大事だと思います。
プレイする環境が明らかに新規ユーザーや初心者に優しくなく、家庭で遊べるタイトルもPCハードのみ、月額料金制、30,000円以上する専用コントローラが必要、などとてもじゃないですが子供たちが気軽に遊べる代物ではありません。今時ゲームセンターに行って1プレイ100円以上かかるゲームをやる若者がいるんでしょうか・・・?

先日音ゲーを知らない友人と音ゲーの話をした時、「当時(10年以上前)ゲーセンの音ゲーコーナーは触れにくい雰囲気があった」というようなことを言っていました。
妙に納得してしまったんですが、やっぱり新規ユーザーや初心者がゲームに触れられるためにはコンシューマー機の存在って本当に大事ですよね。モバイル版の音ゲーがあんなに流行るのも当たり前です。だって無料で遊べるもん。

今後例のプロリーグがどうなっていくのかは分かりませんが、何にせよ選手やユーザーが不幸にならないような座組みになってほしいものです。

ゲームは楽しいのが一番ですから。